美しくて幻想的な再生の物語。
イランを代表する映画監督アッバス・キアロスタミと現代詩人アフマド=レザー・アフマディーが、
ともに30歳のときに共作した幻の絵本、本邦初訳です!
「ぼく」は、兄へ宛てた手紙を書く。
季節は夏から秋へと変わり、テラスに置いたままの手紙も色が変わってしまった。
「ぼく」は季節のうつろいに驚き、その季節のひとつひとつを
部屋へ取り込もう窓を作るが、灰色に塗った窓を春は素通りしていった。
夢と現実、永遠と瞬間、色とりどりの風景と喪失の暗い影、
さまざまに交錯する「ぼく」の記憶は、やがて迎えた朝に―。
詩的な言葉で少年の心理を幻想的に描写したアフマディーの物語に、
作画を担当したキアロスタミは写真のコラージュに彩色を施して、
そのイメージを見事に定着させました。
ドキュメンタリーのような手法を駆使して、
「ここにしかない今」を追求したキアロスタミの「一瞬」への執着を
垣間見ることができる貴重な絵本でもあります。



