商品名 : 貧困理論入門

メーカー名 : 堀之内出版

商品価格 : ¥ 2,000 税抜

出版年月日 : 2022年5月

著者名 : 志賀 信夫

ISBN : 9784909237651

ジャンル: 法律・経済・経営・社会学

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「貧困理論」を基礎から解説する初の入門書。

貧困問題は、依然として深刻な社会問題であり続けている。
私たちはどうすればこの問題を緩和し、根絶することができるのだろうか?
それを考えるためにも、そもそも「貧困とは何か?」と改めて問うことは重要な課題だ。
本書では、ブース、ラウントリーらの貧困調査による「絶対的貧困」からはじまり、べヴァリッジの社会保障論を経由して、タウンゼントの「相対的貧困」、EUの「社会的排除」へといたる、「貧困概念」の歴史的な拡大過程を追いながら、貧困対策の理論的核心を探っていく。
貧困研究で期待の若手が、資本主義における階級と階層の両概念に改めて光をあてつつ「貧困理論」を基礎から解説する初の入門書。

【推 薦】
いくら研究が増えても、理論が間違っていたら、現状は変えられない。
必要なのは階級論的貧困理論。
貧困克服のための「脱資本主義宣言」!
──橋本健二 社会学者

「貧困に陥ったら自己責任である」あなたがそう思っているのなら、車椅子ユーザーの私が電車に乗る時、毎回不便を感じ、時には乗せてもらえないのは仕方がないことなのでしょうか? 改善を求めるのはワガママなのでしょうか。平等に見えながらも、違いを受け入れない社会はつらいです。この本の「選んだ貧困ではなく、社会的排除による、押し付けられた貧困がある」の視点に、私は救われました。自由の平等を求め続けたいです。
──伊是名夏子 コラムニスト

貧困問題は、僕らが生きているこの時代に終わらすことができる。
そのためには、みんなが関心をもって取り組むことが大切だ。
本書は、貧困問題を正しく理解する上での良書である。
──田口一成 株式会社ボーダレス・ジャパン まえがき
[第1章] 「貧困」とは何か――諸概念の整理
貧困理解の前提となることばの整理
貧困概念とは「貧困の意味内容」のこと
貧困の定義とは「貧困と非貧困の区別・境界」を言語化したもの
貧困の測定とは「貧困の広がりと深刻さの計量」
「格差」「不平等」「貧困」の概念的区別
階層論と階級論
貧困概念は人びとの要求によって拡大してきた
貧困理論の学説史に関する概要説明

[第2章] 絶対的貧困理論
ブースの貧困調査と貧困の捉え方
ブースの調査研究にひそむ「分断と統治の論理」
ラウントリーの貧困研究と貧困調査
「絶対的貧困」の概念
ブースとラウントリーの相違点の整理
「絶対的貧困」から考える現代日本の生活保護

[第3章] 相対的貧困理論
相対的貧困理論の考え方
相対的剝奪概念から定義づけられる貧困
ベヴァリッジ体制の成熟とタウンゼントの貧困理論
タウンゼントの貧困理論
「普通の生活」と「社会参加」
タウンゼントの貧困理論と現在
「相対的剝奪」と「相対的貧困」に関する補足説明

[第4章] 社会的排除理論
社会的排除とは
EUの社会政策と「社会的排除/社会的包摂」
「社会的排除」概念が一般化した社会背景
「自由」と「自己決定型社会参加」
「自己決定」を可能にする「自由」
「自由」の実質的広がりを規定する三つの要素
自由獲得の歴史
自由拡大の担い手
「権利の擁護」と「権利の保障」

[第5章] 「自由の欠如」と現代日本の貧困問題
本章の目的
自由の平等と幸福
貧困と差別、および貧困者への差別
権利の有用性および有効性と自己決定の限界性に関する検討
「子どもの貧困」問題
「経済的投資アプローチ」と「Well-beingアプローチ」
普遍主義と脱商品化
社会的包摂と社会参加

[第6章] 階層論的貧困理論と階級論的貧困理論
「あってはならない生活状態」再考
階級論的(資本‐賃労働関係)視点の必要性
失業者対策と相対的過剰人口対策
日本の労働者階級と階級意識の喪失という問題
無所有に対する抵抗

あとがき
引用文献一覧

著者について

志賀信夫
県立広島大学保健福祉学部准教授
一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。NPO法人結い理事。日向市子ども未来応援会議副会長(宮崎県日向市による子どもの貧困対策会議)。主な著書に、『貧困理論の再検討―相対的貧困から社会的排除へ』(単著、法律文化社、2016年)、『地方都市から子どもの貧困をなくす』(畠中亨・志賀信夫共編、旬報社、2016年)、『ベーシックインカムを問いなおす―その可能性と現実』(佐々木隆治・志賀信夫共編、法律文化社、2019年)、『どうする日本の福祉政策』(埋橋孝文編著、担当相:第5章「貧困―反貧困の貧困理解」、ミネルヴァ書房、2020年)、『福祉再考―実践・政策・運動の現状と可能性』(田中聡子・志賀信夫共編、旬報社、2020年)などがある。